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ABOUT US ~人格向上のステップとして断酒をとらえる~

わが国において、キリスト教系団体・個人は、アルコール問題の啓発運動、依存症者のケアという点に関して、これまで際立った存在感を示してきました。高名な禁酒運動家、例えば賀川豊彦(長老派)、留岡幸助(組合派)、根本正(受洗は長老派、のちメソジストに転会)、安藤太郎(メソジスト)、美山貫一(メソジスト)、山室軍平(救世軍)らは、みなキリスト者です。特に禁欲的なカルヴァンの系譜に属する長老派や組合派、そして聖潔(きよめ)と社会福祉を重んじるウェスレーの系譜に属するメソジストや救世軍は禁酒・排酒運動に多大な貢献してきました。一方カトリックや正教、聖公会やルーテル教会は教義としての禁酒の戒律を持ちません(新約聖書『エフェソの信徒への手紙』にあるように、酔いしれることは禁じている)が、それらの教派にもJCCA(日本カトリック依存症者のための会)や、ルーテル教会の釜ヶ崎ディアコニアセンター「希望の家」など、アルコール依存症からの復帰のための施設は数多く存在します。こうした彼らの長年の努力と献身に対して私たちは甚大な敬意と感謝を捧げるものであります。
一方で、仏教はどうでしょうか? 残念ながら、近代以降のわが国の「禁酒運動」において、仏教は、「殆ど無力」であったし、今もそうあり続けていると言わざるを得ません。仏教の開祖であるブッダは、出家・在家を問わず、飲酒を厳に禁じているのに、一体これはどうしたことでしょうか。日本においては「不飲酒戒」が、時代が経つにつれて、僧俗ともになし崩しに緩んでしまったことが、こうした禁酒運動における「無力さ」の原点にあるものと思われます。以下にブッダの言葉を引用いたします。

生き物を殺し、虚言(いつわり)を語り、世間において与えられていないものを取り、他人の妻を犯し、穀酒・果実酒に耽溺(ふけりおぼれ)する人は、この世において自分の根本(ねもと)を掘りくずす人である。
N. Dhammapada, Malavagga 246-247(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

また飲酒を行ってはならぬ。この不飲酒の教えを喜ぶ在家者は、他人をして飲ませてもならぬ。他人が酒を飲むのを容認してもならぬ。――これは終に人を狂酔せしめるものであると知って――。けだし諸々の愚者は酔のために悪事を行い、また他の人々をして怠惰ならしめ、悪事をなさせる。この禍いの起るものとを回避せよ。それは愚人の愛好するところであるが、しかし人を狂酔せしめ迷わせるものである。
KN. Dhammikasuttam, Culavaggo, Suttanipāta(日本語訳:中村元訳『ブッダのことば』岩波文庫)

善生よ、まさに知るべし、飲酒に六の失あり。一つは財を失う。二つは病を生ず。三つには闘争す。四つには悪名を流布す。五つには恚怒して暴を生ず。六つには智慧日に損ず。善生よ、もし彼の長者・長者子飲酒已(や)まざれば、その家産業日日に損減す。
長阿含経「善生経」

私たちは、もう一度仏教の教えの原点に立ち返り、ブッダが定められた在家の「五戒」を遵守することにより、「断酒」を日々途切れることなく継続し、さらには人格向上をも目指してまいります。「我慢の断酒から積徳の断酒へ!」それが私たちのモットーです。会の発足にあたっては、これまで輝かしい足跡を遺してきた他の団体を尊重しつつ、そのノウハウをも採り入れ、わが国独自の伝統や倫理観に基づく「断酒会」にして参る所存です。なお、この会には「教師」も「指導者」もおりません。皆が平等の立場で、心情を吐露しあい、相互に扶助しあう有志の集まりです。どうか奮ってご参加ください。宗旨・宗派は問いません。

東京断酒積徳会の特長とその目的
断酒が人格向上をもたらし、人格向上が断酒をさらに確かならしめる。そのような人間形成と相互補完的な断酒を私たちは目指します。当会は、ブッダを始め、酒害に警鐘を鳴らした先人たちの言葉を学びつつ、会員皆さまの相互扶助と、協賛者各位の温かいご支援によって、運営されます。本会設立の主な「目的」は以下の四つでございます。
  1. 飲酒を止める必要がある方々、飲酒を止めたいと希望している方々、およびその親族、関係者に対して精神的サポートを行う。
  2. 飲酒を止める必要がある方々、飲酒を止めたいと希望している方々、およびその親族、関係者が相互にコミュニケーションを取り、支え合える「場」を提供する。
  3. 仏教の「五戒」への理解を深め、その内の特に「不飲酒戒」を日々継続的に守ることが出来るよう、会員同士で励ましあいながら、酒害の体験などを語り合う、「学びの例会」を運営する。
  4. 飲酒に対して寛容すぎる日本社会に対する啓蒙活動。及び厚労省、大手酒造メーカー等に対する申し入れ、要望書の提出。
団体旗

断酒には「断酒哲学」が必要です
なぜ酒を飲んではいけないのか?について、仏教(ブッダ)は万人に明確な教えを用意しています。元来、飲酒に対して極めておおらかな我が国には、仏教以外に有効な「断酒哲学」は殆ど存在しません。近代以降の日本の「禁酒運動」は、西洋のそれによって触発され、西洋的価値観(例えばキリスト教)の影響を色濃く受けたものでした。今こそ「日本的断酒会」「仏教的断酒会」が必要であると私たちが考える理由がここにあります。 ビール

五戒は全ての人が守るべき規範です
ブッダが普段の生活で在家信者に守るよう命じられた「戒」は以下の五つです。①不殺生戒(ふせっしょうかい)「生き物を故意に殺さない」②不偸盗戒(ふちゅうとうかい)「他人のものを故意に盗まない」③不邪婬戒(ふじゃいんかい)「不倫など不道徳な異性行為を行わない」④不妄語戒(ふもうごかい)「嘘をつかない」⑤不飲酒戒(ふおんじゅかい)「酒、麻薬などを摂取しない」 五戒